練習や試合の帰りに、子どもがぽつりと「自分、下手だよね」「向いてないかも」と言うことがあります。
親としては、すぐに「そんなことないよ」「上手になってるよ」と否定したくなるかもしれません。落ち込ませたくないし、自信をなくしてほしくないからです。
でも、その一言をすぐに打ち消すより、まず「そう思ったんだね」と受け取ってみる。そこから始めると、子どもが本当に困っていることが見えやすくなります。
「自分は下手」という言葉の中には、今日うまくできなかった、友達との差を感じた、コーチの言葉が気になった、試合に出られなかったなど、いくつもの出来事が混ざっていることがあります。親が先に評価を修正するより、何を見てそう感じたのかを一緒にほどく方が、次の話につながりやすくなります。
「そんなことないよ」とすぐ否定しなくてもいい
子どもが「下手」と言ったとき、「そんなことない」と返すのは自然な反応です。ただ、本人が本当に差や失敗を感じているときは、励ましがうまく届かないこともあります。
たとえば本人は「今日の1対1で全然抜けなかった」と具体的に感じているのに、親から「いや、十分上手だよ」と返されると、会話がそこで終わってしまうことがあります。
まずは「今日はそう感じたんだね」「何かあった?」くらいで十分です。理由を話したくなさそうなら、無理に聞き出す必要もありません。
「下手」を、その子の性格や能力全体にしない
「自分は下手」という言葉は、とても大きなまとめ方です。でも実際に起きているのは、「今日の試合でうまく判断できなかった」「シュートが入らなかった」「新しい動きがまだできない」といった、もっと小さな出来事かもしれません。
親ができるのは、「下手か上手か」を判定することではなく、本人が何を難しいと感じているのかを少し具体的にすることです。
聞くなら、こんな方向で
- 今日、特に難しかったのはどこだった?
- 前よりできるようになったところはある?
- 今、一番できるようになりたいのは何?
- コーチから何か言われた?
- 次の練習で一つ試すなら何にする?
全部聞く必要はありません。会話が始まりそうな一つだけで十分です。
他の子との差を感じているなら、比較を禁止しない
「○○くんの方が上手」「自分だけできない」と、他の子と比べていることもあります。
このとき「人と比べちゃダメ」と止めても、本人が感じた差そのものは消えません。まずは「そこが気になったんだね」と受け取り、そのあとで「じゃあ自分は何ができるようになりたい?」へ戻していく方が自然です。
親自身が他の子と比べてしまうときの整理は、他の子と比べてしまう。やめようとするより「次に何を見るか」を変えるでも扱っています。
「もっと練習すればいい」に急いでつなげない
自信をなくしているように見えると、「じゃあ自主練しよう」「もっとやればできる」と練習量を増やしたくなることがあります。
でも、本人が困っていることが技術なのか、判断なのか、試合での緊張なのか、チーム内の役割なのかによって、必要なことは変わります。親が原因を決めて追加練習へ進むより、本人とコーチの間で「次に何を一つ試すか」が見える方が実用的です。
「上達していないように見える」と親が感じるときは、子どものスポーツがなかなか上達しない。親は何を見ればいい?で、結果と小さな変化を分けて考えています。
親が「評価者」になりすぎない場所を残す
スポーツでは、コーチから評価され、試合では結果が出て、周りには上手な子もいます。家に帰ってからも親が「今日何点だった?」「あそこはできてなかったね」と評価を続けると、子どもにとって競技から離れる場所が少なくなります。
JFAの保護者向け情報では、サッカーの主役は子どもであり、子ども自身が考え、感じ、判断してプレーしたことを認める考え方が示されています。うまくいかなかったときも、まず本人の経験として受け止める。その姿勢は競技を問わず参考になります。
親が毎回正しい評価を返す必要はありません。「今日はそう思ったんだね」「また話したくなったら聞くよ」と終わる日があってもいい。家庭まで採点の場にしないことも、一つの支え方です。
褒めるなら、能力を証明しようとしなくていい
「自分は下手」と言われると、自信を取り戻させるために良いところをたくさん並べたくなります。
でも、「あなたは上手」「才能がある」と大きく評価し直すより、親が実際に見たことを短く伝える方法もあります。
「最後まで戻ってたね」「前より自分から声を出してたね」「あの場面でもう一回挑戦してたね」。そこまで伝えたら、どう感じるかは本人に残します。
褒め方をやる気の操作にしない考え方は、スポーツをする子、どう褒める?「結果」より先に親が見たいことでも整理しています。
研究でも、親の関わり方は「量」より「質」が重要とされている
若いアスリートと親の関係を扱った系統的レビューでは、親の関与は多ければ多いほど良いという単純な話ではなく、自主性を支える関わり、前向きな親子関係、適度な関与などが動機づけと関連していると整理されています。
また、若年スポーツでコーチや親の対人関係を改善するプログラムを扱ったレビューでは、自信や不安、自律的な動機づけなど複数のアウトカムが検討されています。ただし、こうした研究から「この一言を言えば自信が上がる」とまで言うことはできません。
親にできるのは、自信を直接つくってあげることより、本人が自分の経験を言葉にし、次を選べる余地を残すことだと考える方が現実的です。
「自分は下手」が何度も続くときは、背景も見る
一度「下手」と言っただけで、メンタルの問題や自己肯定感の低さを決めつける必要はありません。悔しい試合の直後なら、誰でも強い言葉を使うことがあります。
ただし、毎回自分を強く否定する、競技へ行けなくなる、誰かから繰り返し侮辱されている、失敗を怖がって日常生活まで大きく影響しているなど、別の困りごとが見える場合は、単なる「自信の問題」で終わらせません。本人の話を聞き、コーチや学校、必要に応じて専門家など信頼できる大人につなぎます。
まとめ|「下手じゃない」と証明するより、何を感じたかを聞く
子どもが「自分は下手」と言ったとき、親がすぐに正しい評価を返す必要はありません。
まず「そう思ったんだね」と受け取り、話せそうなら何がそう思わせたのかを聞く。「下手」という大きな言葉を、今日難しかったことや次に試したいことへ小さくしていく。
親が自信を注入するのではなく、子ども自身が自分の経験を整理できる場所を残す。そのくらいの距離で十分な日もあります。
参考にした情報
- 日本サッカー協会「保護者の役割」
- Gao et al. (2024) The role of parents in the motivation of young athletes: a systematic review
- Bengtsson et al. (2024) The effects of interpersonal development programmes with sport coaches and parents on youth athlete outcomes
- Revisiting the Self-Confidence and Sport Performance Relationship: A Systematic Review with Meta-Analysis

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