夕飯のあと、子どもが何気なく言う。
「コーチ、嫌だ」
親としては、その一言だけで胸がざわつきます。明日の練習は休ませた方がいいのか。何があったのか聞くべきか。すぐコーチへ連絡するべきか。
でも、その夜のうちに「辞める」「我慢する」のどちらかへ決めなくてもいい場面はたくさんあります。
まだ「行きたい」なら、まず話を聞いて終わる夜もある
「嫌だ」と言いながら、翌日の練習には行きたい。スポーツ自体は好き。友達にも会いたい。
そんな時は、親がすぐ解決に走らず、「何が嫌だった?」「何て言われた?」と聞いて、その日は終わってもかまいません。
一度注意されて腹が立ったのか。話し方が苦手なのか。何度も同じことで困っているのか。子どもの言う「嫌」には幅があります。
親が「それはひどい」と先に意味を付けると、本人が感じていることが見えにくくなることがあります。
同じ「行きたくない」が続くなら、待つだけから一歩変える
一方で、「また行きたくない」「今日も怖かった」が何度も続くなら、ずっと本人だけに任せなくていい。
いつからか。どんな場面か。実際に何を言われたのか。ほかの練習ではどうか。本人は競技そのものを続けたいのか。
そしてもう一つ、「親にどうしてほしい?」と聞いてみます。
自分で話したいのか。一緒にいてほしいのか。親から確認してほしいのか。子どもが選べる部分を残しながら、大人が支えます。
親の怒りと、子どもの困りごとはいったん別々に置く
わが子が傷ついているように見えると、親も腹が立ちます。
試合に出してもらえない。言い方が気に入らない。自分ならそんな教え方はしない。
その感情は自然でも、相談する時には「親が納得できないこと」と「子どもが実際に困っていること」を分けた方が、必要な対応を選びやすくなります。
普段からどこまで親が関わるか迷っている場合は、「スポーツをする子に親はどこまで関わる?」も参考にしてください。
大人同士で話すなら、子どもを間に置かない
本人も困っていて、同じ状態が続くなら、指導者やチーム責任者へ確認する場面があります。
その時、子どもに「お母さんがこう言ってたって伝えて」と任せる必要はありません。
「○日の練習でこのような言葉があり、本人が何度か気にしています。どのような意図だったか確認したいです」のように、大人が事実と確認したいことを直接扱います。
子どもにとって、コーチとの関係と親との関係はどちらも続きます。大人同士の対立まで背負わせないことは、大切な線引きです。
安全や尊厳に関わることは、本人が「大丈夫」と言っても大人が動く
ここだけは、「本人がどうしたいかを待つ」だけでは足りないことがあります。
暴力、人格を傷つける暴言、脅迫、ハラスメント、差別的な言動、けがや体調不良を無視した参加などが疑われる場合です。
本人が「大丈夫」と言っていても、子どもだけでは線を引きにくい問題があります。必要なら活動から離し、確認できる事実を残し、チーム外も含めた正式な相談先を使います。
JSPOの「NO!スポハラ」は、暴力だけでなく暴言、ハラスメント、差別など、安心・安全にスポーツへ参加することを害する行為を対象にしています。
2025年度のJSPO相談実績では603件と過去最多になり、相談者は保護者が6割以上、被害を受けた人の74%が高校生年代以下、43%が小学生でした。大人が相談すること自体が珍しいことではありません。
環境を変えることは「逃げた」とは限らない
話し合って関係が変わることもあります。時間がたって、子ども自身が折り合いをつけることもあります。
でも、本人は競技を続けたいのに、今の環境では苦しさが続くこともあります。
その時に別のチーム、別の指導者を見るのは、スポーツを諦めることではありません。競技ごとの指導環境や制度まで確認するなら、少年サッカー、少年野球、ミニバスの整理も参考になります。
「今の場所で頑張れなかった」と考えるより、この子が競技を続けられる場所を選び直すと考える方が近いこともあります。
親が動く距離は、その日ごとに変わっていい
一度の愚痴なら、聞いて待つ。
同じ苦しさが続くなら、一緒に事実を整理する。
安全や尊厳に関わるなら、親が前に出る。
「見守れる親でいなければ」と決めすぎなくていい。子どもが自分のスポーツを続ける余地を守るために、距離を近づけたり離したりする。 そのくらいの柔らかさがあっていいと思います。
試合の最中につい親の言葉が増えてしまう場合は、「試合前・中・後で親の役割を変えてみる」もあわせて読んでみてください。

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