前は練習の日になると、自分からバッグを持って玄関へ来ていた。
最近は、声をかけてもなかなか準備を始めない。自主練もしなくなった。
そんな変化を見ると、親は「やる気がなくなったのかな」と考えます。
でも「やる気がない」は原因ではなく、親から見えた状態につけた名前かもしれません。
最初にするのは、やる気を出させることより「前と何が変わったか」を見ること。そこから始めます。
「練習しない」より、その前後の変化を見る
自主練の回数だけでは、子どもの状態は分かりません。
練習へ行く前に時間がかかるようになったのか。帰宅後に以前より疲れているのか。試合の話をしなくなったのか。学校や睡眠のリズムも変わっているのか。
一つの行動を切り取るより、最近の生活の中で何が変わったかを見る方が、本人へ聞く材料になります。
理由は親が診断せず、仮説のまま置いておく
疲れているのかもしれない。うまくできない時期なのかもしれない。仲間や指導者との関係が気になっているのかもしれない。ほかにやりたいことができたのかもしれません。
どれも可能性はありますが、外から見ただけでは決められません。
「最近やる気ないよね」と評価を置く代わりに、「最近、練習の日どう?」「前よりしんどそうに見えるけど、何かある?」と聞きます。
答えが「別に」なら、その場で原因を当てるまで質問を続けなくても構いません。話せる余地を残して、また様子を見ます。
研究も「親がやる気を入れる」単純な話にはしていない
2024年の若年アスリートと親の関わりに関する系統的レビューでは、29研究、若年アスリート9,185人、保護者2,191人が整理されました。
レビューでは、親が子どもの自律性を支える関わり、適度な関与、良好な親子関係などが、望ましい動機づけと関連するものとしてまとめられています。
また、デンマークのクラブスポーツ参加者を追った研究では、自律的な動機、能力感、関係性、自己決定感や、コーチがつくる支援的な環境が翌シーズンの継続と関連していました。
これらは「この声かけをすればやる気が戻る」という処方箋ではありません。本人が自分で続けたいと思える余地や、できる感覚、人との関係、環境を見る視点として使います。
励ます前に、負荷を変えられないかを見る
疲れている可能性があるのに「もっと頑張ろう」と追加練習を勧めると、原因と反対の対応になることがあります。
平日の帰宅時刻、練習回数、週末の試合、移動、睡眠。学校の予定も含め、一週間の中に休める時間があるかを見ます。
必要なら一度休む、参加回数を相談する、家庭での自主練をいったん減らす。負荷を下げることと、競技を辞めることは同じではありません。
「できない」が続いているなら、結果より本人の困りごとを聞く
試合に出られない、思ったように上達しない、役割が分からない。そんな時期に、以前と同じ熱量で自主練できないこともあります。
親が先に「もっと練習すればできる」と答えるより、「今、一番うまくいかないと感じるのは何?」と聞きます。
本人が話したければ、課題を小さくする、コーチへ相談するなど次を一緒に考えられます。話したくない日は、親が自主練メニューを増やして埋める必要はありません。
ほかのことに興味が移ったなら、それも変化の一つ
子どもの興味は変わります。
前ほど競技を最優先にしなくなったからといって、すぐ怠けたと決める必要はありません。別のスポーツ、友達、勉強、趣味へ気持ちが向いていることもあります。
「前はあんなに好きだったのに」ではなく、「今はどうしたい?」と現在の本人へ聞き直します。
「辞めたい」と言葉になったら、やる気を戻す話から離れる
本人が「もう辞めたい」と言ったなら、「どうすればまたやる気が出るか」だけを考える段階ではありません。
何を辞めたいのか。今のチームなのか、競技そのものなのか。休みたいのか。別のことへ進みたいのか。
その場合は、「スポーツを辞めたい」と言われたらで、続ける・辞めるの前に本人の言葉を聞く流れを整理しています。
痛みや強い苦痛は、モチベーションの問題にしない
けがや痛みが続いている。睡眠や食事が大きく崩れている。練習や特定の人を強く怖がる。暴力・暴言・いじめが疑われる。学校生活まで大きく変わっている。
こうした時は、「気持ちを前向きにさせよう」とするより、安全や健康を優先します。必要に応じて活動を休み、医療機関や所属団体など状況に合った相談先へつなぎます。
やる気を元に戻すより、今の子どもを見る
前と同じように自主練してほしい。もっと夢中になってほしい。親にはそんな願いがあります。
でも、子どもは変わっていきます。活動量が合わなくなることも、目標が変わることもあります。
「やる気がない子」と見るのではなく、「最近、何が変わったんだろう」と見る。その方が、親が今できる支え方を選びやすくなります。

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